『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』金 邦夫 著 2015年5月21日初版 東京新聞



『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』
金 邦夫 著 2015年5月21日初版 東京新聞

前著『金 副隊長の山岳救助隊日誌』角川学芸出版2007
に続いて 近頃の山岳救助活動の実態とか大都会近郊の遭難登山者の傾向が記述されている。

金氏の活躍する奥多摩山域は 大都市近郊での日帰り登山圏内なので おびただしいほど 多くの登山者で賑わう。そこでは 中部山岳など 大きな山岳地帯とは 違った 大都市近郊 特有の遭難傾向が あらわれている。

高山のある 中部山岳と違って 奥多摩山域では 標高が低いので 多くの登山者は チョットの あの山へと 気安く 入山。その気安さからか 体力 経験 技術など不足のうえ 軽装などと 装備不十分 天候判断甘い 地形判断未熟なままで 思わぬところで転落 滑落 道迷い 彷徨したりして 遭難多発。

山岳遭難統計では 青梅 五日市 高尾警察署管内 を主とする東京都の山岳遭難件数は 平成22年には都道府県別に全国三位の件数。平成25年 26年は全国5位とつねに都道府県上位にある。

大都市近郊ならではの 気安さや 登山人口の多さ からくる 遭難件数なのだろう。

ただ 大都市近郊では 登山者の新しい 登山スタイル トレラン 山ガールなどの 流行やトレンドも 常に時代の先進を いっていているようだ。

トレラン 山ガールなどが増えてきたおかげで かつて 大半を占めていた 中高年の年代から 近頃では 次第に 若い年代が 徐々に 増えてきているのは 山の将来を考えたら とても 喜ばしいことなのだろう。

登山者の数も多く 遭難者も多い、大都市近郊ならでは 山岳遭難救助の 悩みの多い 奥多摩山岳救助活動がよくわかる書籍だ。

 本書を読んで 山岳遭難対策を 改めて考えてみた。

以下 私なりに 遭難対策上 とくに気になる 重要なポイントをあげてみる。

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「当てのない捜索は 東京ドームで10円玉を探すに等しい」


『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』23ページ
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行き先を告げずに 出かけ いまだ帰宅せず。家に戻ってこないので 何日かたった後に捜索依頼。

遭難時の初動捜索ができず 生存率が下がるのだが、登山届 おろか 家にも 書き置きメモもなく まったく どこの山 に出かけたか わからない。

仮にメモやヒント PC内からの山行計画ファイルの痕跡 閲覧履歴などをみて 山行計画 などを 類推しても 捜索では やはり 雲を掴むような 情報しか残されてない。

こうした遭難者の捜索は何班にも分かれて 長期間 くまなく探すという 膨大な手間を捜索側にしいて 多大な労力を消耗させることになる。

そして ついには 全く 手がかりなく 捜索は難航。長期化し 行方不明のままで終わってしまう。

この間 東京ドームで10円玉を探す 当てのない捜索に 費やされる徒労は大きい。

 遭難者は 捜索する側 多くの皆さんに 迷惑をかけることにつながるので せめて 行先メモ 登山届を残すよう 金氏は 呼びかけている。

行方不明を避けるためには 行先メモ 登山届(紙ベースでなく いまでは電子登山届けである 「コンパス」などもある) などを 活用して 痕跡を残すこと。

ヤマメモにも 山行計画 登山メモの機能があり 何らかの 足跡を電子的にWEB上に 残すことができる。

その日の 登山ルートのヒントとなる 何らかの メモ 電子メモ 登山届などを どこかに残置しておくのは 行方不明を避けるために きわめて大切だ。

登山届システム「コンパス」は いくつかの県警の登山届と連動して運用されている。

コンパス
http://www.mt-compass.com/

ヤマメモ
http://www.yamareco.com/modules/yamamemo/userinfo.php?uid=42886

山行計画
http://www.yamareco.com/modules/yr_plan/viewplans.php

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携帯電話 GPS位置情報(緊急通報位置通知)


「最新機能のスマートフォンを所持し、電波状態がよくGPS機能で位置をピンポイントに特定できたことがせめてもの幸運だった。」141ページ

「雲取山に向かった山ガール二人から「道に迷った」と携帯電話で青梅警察署に救助要請が入った。
署員が遭難者の位置をGPS機能でで確認するするために110番通報するように指示した。」149ページ

『すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘』
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昨今 山岳遭難の救助要請手段として 携帯電話からの救助要請が 全体の 四分の三 (74パーセント)をしめるまでになっている。

ただし山岳地帯では電波が通じず 圏外となるところも多い。

携帯電話が すべての山域で通じるわけではなく 圏外も多いのは しっかり 頭に入れておく必要があるが、ここでは ひとまず 一応 携帯が通じると仮定して話を進めていく。

いまでは 携帯電話での SOS発信が多くなっていて、GPS位置情報把握型の最新携帯電話からの 110番通話では 捜索側が自動的に すぐGPS位置情報を取得できて 位置把握ができる。(緊急通報位置通知)

(仮に GPSオフの設定になっていても 110番側の操作で 自動的にGPSオンになる)

新しいGPS付のケータイでも 110番でなく 自宅や知人 警察でも 警察署 警察交番 駐在所などにかけたりしたら (緊急通報位置通知)でのGPS位置取得ができない。

また GPS機能のない 古い携帯電話では 基地局からの距離で位置を算出する ので 測定誤差が大きすぎて 使い物にならない。

GPS機能の(緊急通報位置通知)ができるケータイから110番しないと 正確なピンポイントの位置把握ができないので、同じ警察でも 駐在所 警察署へ電話したのでは 正確なピンポイント情報が伝わらない。

遭難した方(要救助者)が 山岳救助で まず 大事なのは 正確な位置情報をいかに 捜索側に きちんと正確に 伝えるかがまず最初の重要なきめて。

位置情報がチンプンカンプン説明の救助要請では 捜索しようもない。

これが きちんと できないので 以降 捜索側に多大な労力をかけるのだ。

チンプンカンプンの位置情報で当てのない捜索では 東京ドームで10円玉を探すに等しい とてつもない労力苦労が 捜索側にかかってきてしまう。

ピンポイントで位置情報を把握できる GPS機能付き(緊急通報位置通知)で110番してこそ GPS位置情報が110番側に自動的に伝達できるのだ。

初動がうまく素早くできるかは GPS機能付き(緊急通報位置通知)最新携帯電話で110番通報することからはじまる第一歩。

登山者は 是非 GPS機能付きの 「緊急通報位置通知」ができる 比較的新しい携帯電話の機種を 使うようにしたいものだ。

そうでなければ 別に ガーミンなど専用GPSをもつか。

一方 携帯電話の普及は 安易な救助要請を増やす 結果にも なってしまうのかもしれないので 安易な要請を出さないような 登山者のマナー向上 教育活動は今後の課題として残る。

が ともかく きちんとした GPS機能付き携帯電話で「緊急通報位置通知」で正確な位置情報含めた 状況を的確に連絡して できるだけ 捜索側の 負担を少なくした 救助要請の電話をしたいものだ。

もし ケータイが通じない圏外が主体の山域でも アマチュア無線は通じるかもしれない。


ケータイ電波では山深く 圏外エリアになる場合でも アマチュア無線の144MHz帯で リアルタイムに現在位置通報するAPRS は遭難対策にきわめて有効なものだと思う。

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APRS(Automatic Packet Reporting System)

アマチュア無線の位置情報システム

趣深山 コールサイン 「 JJ5MDM 」

使用機器 YAESU FT2D

APRS 位置情報は 以下URLで 閲覧できます。
http://ja.aprs.fi/

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沢に下るな。

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道迷いから 不用意に沢を 下って 崖で 行き詰まり 転落 滑落して 遭難にいたるパターンが多い。

奥多摩のような山域では あらかじめ 沢沿いに きちんとした登山道がある場合を除いて 不用意に 道のない 知らない 沢には絶対に下らないのが原則だ。

ただし 全国的には いくつかの山域では だいたい 沢をつめていく 登山道しか 山頂にいたる 道がないない場合もあるので この場合は その山域のルールに従う。

まあ 一般的には 知らない沢には 不用意に くだらない はいらないのが 正解だ。

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山岳会


古くからある会である 某山岳会の遭難事案。

十八人と 大勢いて 軽度なのにSOS救難。

ヘリ が使えず 山岳救助隊員が 重たい遭難者を担いで下ろしたら。

なんと 救急車に乗らず ピンピンして 電車で帰ると言い出す程度の軽度さ加減。

なんとも 不可解な「遭難事象」 を 金氏は 体験。

名だたる 山岳会組織も 昔と全く違ってしまった現実。

つまるところ セルフレスキュ-などの技量もないほど 実力が低下している 一部の山岳会の なさけない ていたらくぶりを 著者は 辛口で 厳しく指摘している。




金 邦夫氏の著書を読了。

警察の山岳救助隊では最強の山岳レスキュー隊である 富山県警山岳警備隊で長年活躍された 元隊長 谷口凱夫さん
の 遭難の件を 知った。

山岳遭難は ベテラン プロ登山家でも遭難するのだ。


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元 富山県警山岳警備隊長 谷口さん

かつて 富山県警山岳警備隊で長年活躍された 元隊長 谷口凱夫さん。

その谷口さん自身が遭難!!

 2014年9月中旬、北ノ俣岳から太郎平小屋への途中 「直径3ー4センチ程度の石につまずくようになって、膝が曲がらないようになった。地面に足を着けたら脳のてっぺんから抜けていくような痛みだった」仲間の助けを借りて、なんとか太郎平小屋にたどり着くことができましたが、自力での下山は困難だとして救助を要請。
ヘリコプターで富山市内の病院へ、加齢による膝の摩耗と変形が原因とか。

http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_0721.html

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遭難者を 救助してきた かたも いつかは 助けてもらう 立場になる。

山は どんな方にも 等しく おなじく 相応に おなじく 対応するのであろう。

後出しじゃんけんで 遭難されたかたを あれこれ言うことは たやすい。

だが 谷口 元隊長でも 予測できないことに 突然 襲われた。

ましてや 素人の私など いつ 明日は わが身に 災難が降りかかってくるかもしれない。

すぐそこにある遭難事故。

山中では 常に謙虚に 自分を冷静に見極め わきまえた 慎重な行動をこころがけ なくてはいけないと 自戒する次第だ。

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2015年7月23日記

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